SCIENCE Vol.6
渚は辺りを見回した。地下だというのに明るい。 廃ビルの下にあるとは思えない精密機械の数々。チタン色の超合金が監獄を思わせる。 「あのぅ…ここ何ですか? どうして私が捕まんなくちゃいけないんですか?」 白々しい三文台詞でも黙っているよりはマシ、と彼女は判断したらしい。 しかし、隣の白衣の男は何一つ語らず無言のまま渚を奥の部屋まで連れて行った。 目に映ったのは大きなガラス。さらに下の階を覗ける構造になっている。 「おい、この娘どうする?」 見知らぬ男達に舐められるように視線を浴び、少しずつ彼女は恐怖を感じ始めていた。 「何すんのよっ!」 全身に鳥肌が立った。太ももを撫でられたのだ。 (ひーん晃君。早く来て〜) 今更ながら自分の行動を後悔した そのとき。 「てめぇら何しやがるっっ!!」 彼女の念が通じたかどうかは知らないが、王子様は空中から突然に現れた。 (何かが違うぞ…) 確かに説明された計画に間違いはないが、潤はどこか釈然としないものがあった。 「はーい。じゃ、おじサマ達ちょっと眠っててねー☆」 ようやく理性を取り戻すと、今度は催涙ガスを噴射する。もはや晃のポケットは四次元ポケット状態である。 「これは これは…珍しいお客さまね。JN-28、戻ってきてくれて嬉しいわ」 黒い瞳を光らせて唇をさらに吊り上げる。 「何のためにこんなことをしているのかな? 美人のおねーさま」 晃が訊く。 「あら。いい男ね。それに頭も良さそう」 緊張感が漂う。20代の女性――しかもけっこうな美人――に褒められて、悪い気はしないが悪役美女に言われても嬉しくもない。 「私たちは人工生命体の製作を試みてるわ。人間そっくりのマシノイドを。 この飛びぬけた腕力にESPが加わったら最強だと思わない?」 右月がその笑みを崩さぬまま話し続けた。 「私たちの研究で、能力は脳波のためだと突き止めたわ。でもね、この周期は今の科学では作り出せないのよ。そこで私たちは考えたの。 恐ろしいことを淡々と、いやむしろ誇らしげに口にする右月に、晃は肌が粟立つのを覚えた。 「そして私たちの研究は最終段階に入ったの」 晃は言った。 「正解よ。頭脳明晰、眉目秀麗なんて おいしいわね。別のところで君と逢いたかったわ」 艶かしく笑う。 「マッド・サイエンティストめ…」 晃の拳が小刻みに震えているのを、視界の端で少年は見た。 「被験者は…その後どうしたんだ?」 「科学の発達に犠牲はつきものよ」 と。 「潤!やめっ…」 必死で晃が潤を抱きとめ制止した。 「はぁはぁ…どう? 自分の体を弄くられる気分は? あんたの足の関節をはずしたよ。 座り込む右月を蔑む形で、潤が見下ろした。冷酷な笑み。子供とは思えないほど迫力がある。 「逃げる気なんて はなからないわよ。私はここで命を絶つわ」 妙に割り切った声が部屋に響いた。 |
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