SCIENCE Vol.7
「私…改造人間なの。事故に遭って、九死に一生を得たわ。でも目覚めたときはもう人間じゃなかった。そこで私は自分の体を作るために俗世間から離れて、密に研究をしだしたわ。そうよ、最初はそんなつもりなんてなかった。ただ人間に戻りたかったの。でも…その研究の途中でESPの存在を知った私はその能力が欲しくなってしまった。――――最低な女なの。気づいたときにはもう戻れなかったのよ」 その乾いた悲痛な声が彼女の話を裏付けていた。 「さあ、もういいでしょう? 私は疲れたの。改造人間として恥をかくより死を選ぶわ。……さようなら。 「右月!」 たまらなくなって、晃が叫んだ。 「あんたは人間だった。だから悲しんだし、憧れたし、一生懸命にもなった。 ただ……道を誤っただけだ…っ」 ゆっくりと、彼女はその双眸を開き、そしてその後柔らかに微笑んだ。 「ありがとう…やさし…いの…ね…」 カタッと音がして右月綾子は倒れた。 「こんな話って…なんだよ、このエンディング……」 黙りこむ晃を後ろに、潤は奥へと向かった。 「お母さんっただいまぁっ!!」 母親はしっかりと彼を抱きとめ、涙でぐしゃぐしゃになりながら喜んだ。 ■■■ 「一件落着か…」 ふうっ、と晃がため息をついた。 「最高の誕生日だったな。ありがとね、晃君。それと、ご苦労様でした」 心から言っている隣の渚を見て、晃は微笑した。 「渚、はいこれ。プレゼント」 前触れもなしに、晃はちいさなラッピングされた箱を手渡した。 「うわっ…きれい…。ありがとう」 それだけ言うと、晃は視線を窓に移した。 「科学者の卵には、今回は辛かったわね」 静かに渚が口にした。晃に向かって。 「そうだな…本当に嫌な現実を見たもんだと 今でも思うよ。……でも俺は間違えない。科学技術の発展は「人のため」 うつむいた晃の肩に、渚はもたれた。 「晃君なら大丈夫よ。私が保証したげましょう。…ねえ、この蒼い宝石を私たちが受け継ぐなんて素敵だと思わない?」 返事の代わりに、晃はやさしい大人びた微笑を返して、渚の首にそのネックレスをかけた。 Fin |
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