SCIENCE Vol.5
晃が行ってしまって、しばらくの沈黙があった。 風の当らない壁際へと移動し、2人は彼の帰りを待っている。 「ねえ、渚さん…」 沈黙に耐えかねて潤が口を開いた。 「草薙が何を買ってくるか 知ってる?」 なぜか彼が逃げる、とは思えなかった。 「知らないわ。でも晃君は人を傷つけるようなものは買ってこないわよ。絶対」 絶対、なんて言葉を付け足して渚は言った。 (だって…晃君だもの) それこそ絶対的な自信というものだ。 「じゃあ、どうやって研究所に入るつもりなんだろう? 話して入れてくれることろじゃないのに」 思い出すように言う潤の顔は真っ青だった。恐怖に顔を引きつらせて。 「怖いことは忘れるのが一番よ。晃君は頭が良いし、頼りになるんだから。ね? 安心していいの。 渚の問いに、潤は即答した。 「ただいまって言って、お母さんに抱きつくんだ。あとね、アミューズメントパークに行きたい!」 穏やかに訊く渚に、潤は顔を赤らめて、力強くうなずくのだった。 ■■■ 太陽が頭上に昇るころ、晃は戻ってきた。昼食をしっかり抱えて。 「ほれっ。ハンバーガーだけどいいよな? 腹が減っては戦はできぬっつーだろ、昔から。 遠慮なく食え」 ニカッと笑って、彼も自分の分にかぶりついた。すごい勢いで、たいらげてゆく。 そうやって簡単に昼食を済ますと、買物袋の中は空になってしまった。 「なぁ、草薙。お前は一体何を買ってきたんだ? 昼飯だけじゃないんだろ、まさか」 恐ろしく不安げに潤が訊いた。 「ひ・み・つ☆」 くらくらする。 「今、僕は目の前が真っ暗になったぞ。ついでに言うと鳥肌も立ったし、腰も抜けそうになったし、勝利の女神の後姿まで見えちゃったぞ! この白昼青空の中、どこに星などあるというのだ。 「さて潤。右月の波動、キャッチ出来るか?」 急に真剣な顔で訊かれて少年はビックリする。百面相な奴だ。 「やってみる。見つけたらどうすればいいんだ?」 黙ってうなずくと、潤はすぐに探し始めた。 「――――あ、見つけたっ」 ■■■ 一面の荒野。まだ開発途中の開拓地だろう。そこに一つだけ廃屋がある。 「問題はどこに制御システムがあるか…だな」 本部にあるであろうこの制御システムが一番厄介なのだ。ESPを無力化、あるいは著しく威力を抑えるシステム。 「んじゃあさ、私が囮になって本部まで連行されるから、その後こっちに2人とも飛んで入っちゃえば? 渚が前触れもなくそう言うと、2人がいる岩陰から立ち上がり、あたかも今着いたように振舞った。 「あのバカ。勝手に危ない橋 渡りやがって…」 制止する間もなく行かれてしまった晃が、潤の横で悔しがっている。 「いいか、俺が合図したら瞬間移動するんだ。着いたと同時に俺がコイツを投げるから、お前は結界を張れ」 外では、着々と計画が練られていた。 |
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