三
女ばかりの屋敷を狙い、金品を奪っては女に乱暴をはたらいて、最後に皆殺しをする夜盗がいた。 その夜盗が都のはずれで例の如く女主人の屋敷で女房を殺したときに、燭台の油を取りに廊下を歩いていた別の女房が目撃し、 悲鳴をあげた。 いつもならば、女子供だけの屋敷なので多少の騒ぎには動じずに皆殺しにするのだが、運悪くその悲鳴を上げた女房の恋人が泊まっており、騒ぎに起きだして、刀を持って抗戦してきた。 傷を負えば足がつく。奪った金品を持っては満足に戦えぬ。 さすがに分が悪い。 男は屋敷にいた女童の首根っこを掴んで、その細い首に血に染まった刃を当てた。 ―――――――暗闇に紛れてしまえば逃げ切れる。 そう判断した夜盗は、自分の左腕に絡みつくように気絶した女童の首をためらわずに切り落とした。 一心不乱に大通りを駆けてゆく男の足がそこでふいに止まった。 ぬらぬらと腹部をひきずりながら、まっすぐにこちらに向かってきている。 「…ひぃっ…!」 夜盗は喉の奥で下品な悲鳴を上げ、元来た道を引き返したが、屋敷の追っ手と鉢合わせとなり、退路を失った。 刀を持つ右手に、うねうねと身体を巻きつけて、そのまま盗人の左手に喰らいつく。 がつがつ、くちゃくちゃと腕を食んでいたが、蛇の頭部の鱗がしだいに薄れ、ようやくまた人の形になり始めると、蛇男は傍目で分かるほど、 ******* 「お前、どう思う?」 博雅は横で眉一つ動かさずに聞いている友人に意見を求めたが、晴明は黙っている。 「吐き出すなんて、よっぽどなことだと俺は思う。…何か理由があるのだろう。だが…」 ようやく口を開いた晴明は、唇の端を持ち上げて笑った。 「うむ」 あっさりとそう言い放ち、晴明は杯を置くと立ち上がった。 この男ならば大丈夫。 博雅は、彼に絶大な信頼を置いているのであった。 |
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