ある婦人画の恋 |
また、あの人が来たわ。 相変わらず綺麗な金色の巻き毛。澄んだ鳶色の瞳。 まっすぐにこちらに向かって歩いていらっしゃる。 ああ、どうしましょう。 毎日この瞬間が一番ドキドキするわ。 だってあの人ったら、あんなに情熱的な眼差しで私を見るのだもの。 そうよ。だってあの人はあんなに魅力的だもの。 「やあ。また来てしまったよ」 まぁ。そんなに嬉しそうに笑わないでちょうだい。 「少しでも時間ができるとね、つい君のことを考えてしまう。もう癖だと言っていいくらいだ」 嬉しいわ。 ・・・なんて、恥ずかしくてあなたには言えないけれど。 ――――喜んでくださるかしら? 「最近仕事が順調なんだ。前に話したかな?僕は売れないシナリオライターで今は恋愛ものを書いてるけれど、この間、初めて僕のファンだと名乗る人から手紙をもらったよ」 まぁ、スゴイじゃない。 「・・・君のおかげだ」 え? 「君と出会って、僕は初めて恋を体感できた。今までの言葉だけのものじゃない。実感を伴った恋だ」 そ、それって、つまり・・・。 「君は・・・笑うかな。僕を愚か者だと」 そんなこと! 「あ、ごめん。もう行かなきゃ。また明日来るよ。それじゃ」 あ・・・行ってしまわれたわ。 それにしても・・・愚か者だなんて・・・。 そうね。そうかもしれないわ。 でも人間に恋をする絵なんて、もっともっと相当の愚か者よ。 ・・・それでも私、本当に彼に恋をしているのだわ。 |
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