-2- 満天の星空。恋人達の夜である。 「ルーラーッ!」 母親を見つけた幼稚園児の如く手を大きく振る。 「どうしたの?なんだか嬉しそうね」 栗色の髪が揺れる。柔らかな微笑み。 「あのねっ…空中飛行(ウィング)がとれたんだ。…あれ?違った。うーんと、ウィングの免許が取れたんだ。どこにでも行けるようになったんだよ」 心底嬉しそうに彼は言う。 「そう。おめでとう。良かったわね」 彼女の笑顔が何よりの賛辞だ。 「えーと、それでね、これから一緒に空の散歩しない?虹色のウィング、きれいだよ」 無邪気なラギーに笑ってしまう。 「それじゃ、私ミカエル様に用事があるから、また後でね」 そう言って、彼女は純白の翼を広げ昇っていった。 ********* 「ご機嫌だな、ルラ」 目の前の美しい青年が軽く笑う。 「ミカエル様。…そう見えます?」 己の頬に手を当ててルラが訊く。 「ああ。とてもね。あのサンタ志望の坊やからデートのお誘いか?」 大天使ミカエルにも困ったものだ。彼女はそう思う。 「そう恨めしそうな顔をするな。美人が台無しだぞ」 ぽん、と大きな掌がルラの頭にのった。 「本当の美人は起こった顔も美しいんですよ」 唸るようにルラが返す。 「そうか。だが笑った顔が一番だぞ」 彼の掌が後頭部をなでるようにすべる。 「ミカエル様?」 いつもと違う彼にルラは疑問符を投げかけた。 「す、すまん」 どうかしていた、と一言呟き、咳払いを一つした。 「あ…今夜は風が強い。気をつけるんだぞ」 こんなにも彼がうろたえたところは見たことがない。 「は、い…」 返事をして、そそくさとルラはその場を立ち去る。 ************ 「どうかしたの? さっきから黙ってさ」 心配そうな顔がルラの顔を覗き込む。 「え? ううん。なんでもないのよ」 いやいやと首を左右に振ったが、彼女の口数が少ないのは本当のことだ。 「ミカエルと何かあったの?」 ラギーにとって彼がいかに大天使であろうと、どんなに偉かろうとも 「ねぇ。何かあったの?」 突然の指摘にびくっとルラは反応した。真っ赤になって口許を押さえる。 「何かされたんだね。そうだろ?俺行って来る、アイツのとこ」 怒りを隠せない面持ちでラギーはきびすを返した。 「まっ…待ってラギー。違うの、違うのよっ」 ぐいっとルラが彼の腕を引っ張ったときに異変が起きた。 「うわっ!! ちょっ…ルラ、放さないと…」 危ない、と言おうとしたが、そのセリフは飛行装置のシグナルによってかき消された。 「きゃっ!!」 手をギリギリまで伸ばし、なんとかラギーは彼女の片腕を掴むことが出来た。 |
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||