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王立研究院にやってきたレイチェルが見たものは、今まで見たことがないくらい真っ赤な顔をしたエルンストだった。 「どーしちゃったの、エルンスト!? 大丈夫? 顔が真っ赤よ?」 開口一番に心配げに見つめてくるレイチェルに戸惑いつつも、エルンストは大丈夫です、と答えた。 「心配してくださって、ありがとうございます。ですが、大丈夫ですので、気にしないで下さい」 レイチェルにとって、既知のエルンストは何かと親しみやすい存在である。 「今日のご用件はなんでしょう。 直接観察なさいますか? それとも望みの予測ですか?」 眼鏡の奥の瞳を柔らかに細め、いつものセリフを口にした彼に、レイチェルはにっこりと笑ってこう言った。 「ううん。今日はアナタとお話をしようと思って」 *** 「話…ですか? なんでしょう」 生真面目に応対するエルンストに苦笑しながら、レイチェル単刀直入に本題に入った。 「最近のアンジェ、変じゃない?」 レイチェルとアンジェリークは、仲が良いが同じ女王候補同士。言わばライバルの関係である。 「ないから、こうしてアナタに会いにきたんでしょうが。…そうね。質問を変えるわ。アルフォンシアは相変わらず望みをフラフラと変えているの?」 この質問に答えるのは、問題ない。 「はい。貴女もご存知だと思いますが?」 短く答えたエルンストに、レイチェルはまた不安そうな顔をして彼を見つめた。 「ねぇ…アルフォンシアが病気ってことはないわよね?」 宇宙の意思が―――病に? エルンストの脳裏に一つの可能性が浮かんだ。 「それは…私には分かりません。むしろ、聖獣を見ることが出来る貴女の方がよく分かるのではないんですか、レイチェル?」 あっさりと答えられてしまった。 「こうなったら、明日アンジェに直接聞いてみましょうよ! ワタシやっぱり心配なんだ。アンジェが困ってるなら助けてあげたいし、 細くくびれた腰に両手を当てて、レイチェルは仁王立ちのポーズでエルンストに言った。 「もちろん。私にできることでしたら協力しますよ」 そうして、2人は明日アンジェリークが王立研究院に来るのを待つことにしたのである。 *** 「こんにちは、エルンストさん。レイチェル。 ここでレイチェルと会うなんて、久しぶりね」 翌日。 「エルンストさん、今日も観察に行かせて下さい」 心なしか頬を染めて、アンジェリークはエルンストを見つめる。 「分かりました。ですが、その前に貴女にお聞きしたいことがあります。少しお時間をいただけますか?」 予想もしなかったエルンストの言葉に、アンジェリークの胸は軽くはねた。 「何ですか?」 形式的に訊いてはみたが、訊かれる内容は、アンジェリークにも予想がついた。 「アルフォンシアは…その、元気ですか?」 アンジェリークは、彼からの質問に少々面食らいながらも、最近のアルフォンシアの様子を2人に話して聞かせた。
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