雪に願いを |
どんなに宇宙の危機であろうが、雪は降るときは降るのである。 魔道は日に日に宇宙を侵食していったが、アンジェリークの一行は目の前の手がかりをたどる他に為す術を知らなかった。 一つ目の「金の宝玉」。 それを手にするためにはセキレンの試練を受けねばならず、アンジェリークは情報を得るために「白き極光の惑星」にある<風花の街>を訪れた。 「おい、なんか天気、ヤバそーだぜ。降ってくるんじゃねぇのか?」 灰色の空を見上げて、鋼の守護聖が宿に入ることを提案した。 「お客さん、運がいいですねぇ。今夜は大雪ですよ、きっと」 店主が愛想良く言った。
「雪・・・こんなに降るのは初めて見るな・・・」 暖炉の火がともった部屋の中で、アンジェリークはじっと外を見つめていた。 はらはら、と舞い落ちる。 「きれい・・・」 ぼんやりと窓の外を見ながら、アンジェリークは呟いた。 「ゼフェル様、見てるかなぁ・・・?」 見てないだろうな、と確信に近い結論を出してから彼女は苦笑した。 「でも、見ないと もったいないよね・・・」 彼の出身惑星は工業惑星だと聞いたことがある。 「・・・どうしよう、一緒に見たくなってきちゃった・・・」 自分のわがままさに苦笑しながらも、思ってしまったものはしょうがない。 「・・・思いつかないわ。しょうがない、木のせいにしちゃおっと」 いても立ってもいられなくなったアンジェリークは、そわそわしながら廊下に出た。 「あの、ゼフェル様・・・!」 いきなり呼び止められた彼は、必死な顔で自分を見つめるアンジェリークに気おされた。 「雪を、お部屋で見させてくれませんか?私の部屋、大きな木があってよく見えないんです」 新宇宙の女王は、あまり嘘をつくのが上手ではないらしい。 「はぁ?雪?」 何を言われるのかドキドキしていたゼフェルは、肩透かしを食らったような声を出す。 (オレはてっきり・・・ちぇっ) 自分の予想がはずれたことが恥ずかしくて、更にそれを期待していた自分がカッコ悪くて、ゼフェルまで顔を赤くする。 「・・・おめー、そんなの見てえのか?・・・まぁいいぜ。今なら部屋に誰もいねえし」 ぎこちない沈黙を破ったのはゼフェルの方だった。 思い切って言って、良かった。 「礼なんかいいって。・・・んじゃ、行こーぜ」 一方、ゼフェルは思いの他 彼女が喜んでくれたので、ちょっと嬉しい。 しかも、よく考えてみれば他にも部屋をあてがわれた仲間は大勢いるのに、彼女はわざわざ自分を指名してきたのである。 ニコニコしているアンジェリークの横で、ゼフェルは彼女に見えないようにして笑った。 |
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