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「どこに行きましょうか?」 アンジェリークが柔らかな髪をなびかせながら言った。 「じゃあ迷いの森の近くまで行ってみませんか? 実は僕、すごく気になってたんです」 いたずらな提案に瞳を輝かせて賛成すると、アンジェリークはスカートをくるんと翻した。 何もはばかることなく、思い切り走ったり笑ったりすることは、少年にとって久しぶりのことだった。 (楽しい!) ティムカは汗で額にはり付いた前髪をかきあげて、大樹の根に腰を降ろす。 幸せすぎて目眩がしそうな一瞬だった。 ****** それからしばらく一緒にお菓子を食べたり走り回った後、遊び疲れた彼らは同じ場所に座り込んだ。 「今日はどうもありがとう、アンジェリーク。とっても楽しかったです! あなたって本当に優しい人なんですね! そう言うと、少年は軽く息を吐いた。普段と同じ、大人びた表情で。 「でも僕、分かったんです。疲れたのは僕らしくないからじゃないかな、って。 すごく楽しかったけど、毎日こんな調子じゃ するとアンジェリークは、小さくかぶりを振った。 「『…らしくない』って言葉、私苦手なんです。だって私も女王候補らしくないって言われてるから。でも最近は気にならなくなりました。 陽も傾いて、黄金色の光が彼女に降り注がれる。 「ティムカ様はティムカ様らしくしていれば それでいいんですよ」 そう言って、アンジェリークは微笑んだ。 強く (―――――そんなこと、許されるわけがないのだから。) 「あの…アンジェリーク…?」 いつの間にか黙ってしまっていたことに気がついて、ティムカはそっと隣の少女の名を呼んだ。 思わず苦笑して、少年はためらいがちに彼女の手を取って、指を絡ませる。 ―――温かい、手。 もう少しだけ、このままでいようとティムカは思った。 「アンジェリーク…僕は、あなたのために……」 この台詞の続きは、もっと自分が大人になったら言うことにしよう。 でも今は。
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