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「あ、あの…っ、アンジェリーク!」 彼女の柔らかい手が無邪気にティムカを引っ張っていく。 まず連れて行かれたのは庭園だった。 「いらっしゃいませー! 毎度、どーも〜。いや〜可愛らしカップルさんやなぁ。よぉ お似合いでっせ♪」 目に眩しいほどの明るい緑色の髪をした商人が、上機嫌に彼らを出迎える。 「こ、こんにちは…」 少年は慌てて商人にぺこりと頭を下げた。 「ティムカさん。彼女へのプレゼントやったらオススメがございまっせ! その名も…!」 もったいぶって息を吸い込んだ商人を見て、ティムカは両手を振って否定する。 「あら〜ちゃいますのん? ほんならご用向きはなんでしょ? 何か探しもんでっか?」 商人の問いに、ティムカは困った顔をしてアンジェリークを見る。 「お菓子を下さい。 チョコとかキャンデーとか…遠足用のものを!」 隣で呆気にとられているティムカを尻目に、商人はあれこれと商品を勧め、あっという間にアンジェリークの両手にはお菓子が山積みされた。 「遠足かあ…よろしいなぁ。あの許された小遣いでギリギリまでおやつを買うために、さんざんない頭しぼったわー。懐かしいなぁー」 やたら遠い目をして懐かしいと連呼する商人であった。 「商人さんも一緒に『子供ごっこ』しますか?」 ――――ティムカはようやく理解した。 その一環として遠足を思いついたらしい。 彼女の思考をたどればたどるほど、それは単純明快で、優しさに満ちていて、彼の頬は緩まずにはいられなかった。 (なんて素敵な人なんだろう) 胸に込み上げてくる 心地よい 感情。 「『子供ごっこ』? そりゃまた随分面白そうなこと考えたなー。仲間に入れてもらいたいけど、うーん…今回は遠慮しとくわ。今日は店の営業日やし、 残念そうにそう言うと、商人は2人にキャラメルを一箱ずつ渡した。 「大サービスや。またごひいきにお願いしまっせ」 彼は軽くウィンクして2人を見送ると、店に戻って呟いた。 「『子供ごっこ』ねぇ…子供が子供の真似するってどーゆーこっちゃろ?」 しきりに首をひねっていたが、「野暮はせんかった俺は大人やな!」と行けなかった自分を慰めるのであった。
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