微笑みの代償を

 

  僕はある星の王太子です。
縁あって主星に留学中に女王試験の教官を頼まれて、現在聖地で「品位」を教えています。

ここには宇宙を統べる女王陛下を始めとした9人の守護聖さま方と、僕を含めて3人の教官と、
そして協力者として更に3人の方がいるんですけど、みなさん個性がバラバラでご一緒しているととっても楽しいですよ。

僕も将来人の上に立つ者として色々と学べることがあって、毎日が充実しています。
あはっ、せっかくこんな滅多にない機会に恵まれたんですから、楽しまなくちゃ損ですものね!

…そう思って毎日僕なりに頑張っているんですけど、他のみなさんから見ると「子供らしくない」そうなんです。
でも僕、「子供らしい」ってどういうものなのか、いまいち分からなくて・・・。
それに僕自身はとても子供っぽいと思ってるんです。
だから早く父のような大人になりたくて。

せめて眩しいくらいに輝いているあなたと一緒に歩いていけるくらい・・・。

***

「ティムカ様?」

アンジェリークは陽に透ける栗色を髪を揺らして少年の顔を覗き込んだ。
名を呼ばれた少年は、自分を不思議そうに見つめる瞳に気づいて慌てて謝る。

「あっ、あのすみません、アンジェリーク! ちょっとボーッとしてしまって・・・あの、何ですか?」

今日は日の曜日で、今はアンジェリークと一緒にカフェテラスでお茶を飲んでいたことをフラッシュのように次々と
思い出し、直後に自分の失礼な態度を深く反省する。
目の前の彼女を放っておいて、考え込むなんてとんでもない失態だ。

「どこか具合でも悪いんですか?って言ったんです。なんだか今日のティムカ様少し疲れてらっしゃるみたいだから」

心配そうに瞳を曇らせる少女の言葉を聞いて、ティムカは何とも言えない微笑をした。
優しいけれど、愁いを帯びた切なげな微笑だ。
外見から推測される年齢とはそぐわない大人びた仕草だった。

「・・・すみません、アンジェリーク。あなたにご心配をかけるだなんて、僕はなんて未熟なんだろう。でも大丈夫です。
ちょっと考え事をしていて…あ、でも大げさなことじゃないんです。本当にちょっとしたことなんですけど」

少年は笑ってごまかすつもりだったのに、少女はそれを許さなかった。
短い言葉で、まっすぐに切り込む。

「でも、気になるんでしょう?」

ティムカは、思わず苦笑してしまった。
この女王候補に嘘をつくのはむずかしいな、と改めて思う。

「ええ。気になっちゃうんです。…その、アンジェリーク、僕はそんなに――――子供らしくないですか?」

アンジェリークはこの質問に、少し戸惑った後「大人っぽいと思います」と答えた。
やはり彼女の印象も同じようなものだったかと、ティムカは胸に少しの痛みを感じる。

憧れる女性に自分はどのように映るのか、気にならないだなんて嘘だ。
そして出来れば他人とは違う評価であって欲しいと思うのも至極、当然なのである。

「この間、庭園で商人さんにお会いしたんです。その時に『もっと子供らしゅうしたって罰当たらんとちゃいますか』って言われてしまって…。
でも、僕、充分子供だと思ってるんですけど、どこか違うんでしょうか…?」

ティムカがとても真剣な顔をして聞くので、アンジェリークは少し考えた後、立ち上がった。
びっくりしている彼に手を伸ばし、いたずらっぽく笑って提案する。

「なら、これから子供っぽく一日を過ごしてましょう! ティムカ様!」

そのまま事情を飲み込んでいない顔のティムカを引っ張って、彼女は商人を探し始めた。

 

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