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  「もちろん、マルセル様も好きですよ」

アンジェリークはためらわずに言ってくれたから、僕は嬉しかった。

「僕もアンジェが大好きだよ!!」

だから僕も迷わずにその時は返したんだけど、あれからなんだか僕の心はモヤモヤしてる。
あの時は、本心から嬉しいと思った。
それは本当。

だけど、どうしてかな?
今の僕は、アンジェの何番目の「好き」なのか気になってる。

おいしい料理やお菓子より僕が好き?
他の守護聖方より僕が好き?
アルフォンシアより僕が好き?

僕は一体何番目なの?

どうしても気になっちゃうんだ。
自分でも、変なことを気にしてると分かってるよ。
僕だって、きっとチュピやランディやゼフェルの中で誰が一番好きか、だなんて聞かれたら困ってしまう。
「みんな一番に好きだよ」って答えると思う。

分かってるけど、気が付いたらそんなことを考えてて、ふいに哀しくなっちゃうんだ。
1番じゃなかったらどうしよう…って。

だから聞きたくても怖くて聞けない。
すごく知りたいのに。

「…ねぇアンジェ。今 気に入ってるものは何?」

僕はこれを聞くのが精一杯。
せめてアンジェの気に入ってるものを聞いて、僕をそれに近づけるよう頑張ろう。
彼女好みになれば、きっともっと僕を好きになってくれるはず。

だけど、彼女は目をキラキラさせてこう言った。

「今は女王試験が一番楽しくて好きです!」

…これじゃ僕はどうしようもないじゃないか!

「楽しいの?」

「楽しいですよ。毎日が新しくて、みなさんとこうしてお会いできてお話もできますし、自分が成長してるのも分かりますし。変化が目に見えて分かるから、それを見るのが楽しいです」

昔、誰だったか忘れてしまったけれど、「強い人間は変化を恐れない」と聞いたことがある。
この女王試験はアンジェにとって大きな変化だったはずで、いろんな出来事が彼女に襲いかかって、アンジェリークという人間を少し変えたかもしれなかった。

――その変化を「成長」と言いきるアンジェリークは確かに強いや。
僕なんて、ちょっとした事にでも不安になっちゃうのに。

「アンジェリークは、やっぱりすごい女王候補なんだね! 僕いっぱいアンジェのこと応援するから頑張ってね!」
「はい! ありがとうございます、マルセル様!」

僕は少し自分が恥ずかしかった。
だってアンジェリークの気持ちばかり考えていて、僕自身のことを考えてなかったんだもの。

僕はアンジェが一番好き。

チュピや他の守護聖方もみんな好きだけど、アンジェリークはまた別。
今までこんな気持ちになったことがなかったから、色々悩んじゃったけど実際はもっと簡単なことだったみたい。
僕がアンジェを一番に好きなら、アンジェが僕のことをどう思おうと彼女を大事にすればいいんだ。
アンジェが女王様になりたいのなら、そのお手伝いをするように。
――だって僕はアンジェが大好きなんだもん。
そうやって僕は僕でアンジェリークを大切にして、アンジェも僕のことを好きになってくれると嬉しいな。
今は一番じゃなくても、いつか一番に好きになってくれるといいな。

そういう変化を僕はしてみたい。

「僕も頑張るよ!」

僕たちはいつの間にか約束の木の下に来ていた。
朝の風に冷やされた木の幹にそっと手をついて、僕は心の中で約束をする。

「はい、一緒に頑張りましょう」

にっこりと笑ったアンジェリークの髪に、木漏れ日がキラキラしてとってもキレイだった。
これからも、いっぱいアンジェの素敵なところを発見していくたびに、僕の好きなものが増えていくんだろう。
それってとっても幸せなことだよね。
僕は少し成長した気分だった。
小さいけれどとても大事なことに気づいた気分だったから。

女王試験はまだ続くから、これからもいっぱい好きなものを増やしていこう。
一番に好きなアンジェリークの一番になるために。

***END***

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