何番目?

 

   
  今度新しく女王候補に選ばれたアンジェリークという女の子は、とっても可愛い子だった。
僕の大事な友達のチュピともすぐに仲良くなったし、毎朝花を一輪届けるとすごく嬉しそうに笑う。
「きれいですね」って喜んでくれる。

花も、小鳥も、甘いお菓子もみんな好きなんだって。
もちろん僕も、って言ってくれた。

でも、じゃあ、僕は一体何番目なの?

             ***

「おはよう、アンジェリーク! 今朝は早いんだね」

朝摘みのお花をリュミエール様やオリヴィエ様に届けている途中、庭園でアンジェリークに出会った。
こんな早い時間に出会えるだなんて珍しいや。

「おはようございます、マルセル様。 なんだか目が醒めちゃって。せっかくだからお散歩してたんです」
「うん。朝の庭園って気持ちがいいよね。僕も大好きなんだ」
「空気も冷たくて清々しいですよね。 今日は一日いいことが起こりそうな気がして頑張るぞーって思えるんです」

そう言って、アンジェリークは両手でガッツポーズを作った。
飾らない笑顔。
朝日を浴びてすごくキレイだと僕は思う。

「今日は僕のところに来てくれる?」

ちょっと期待してたんだけど、答えはダメだった。
やっぱり。
ここのところずっと緑のサクリアを送りつづけたから、アルフォンシアはしばらく僕のサクリアを望んでくれない。
分かってることだから、わがままは言わない。
――――言わないって決めたんだ。

「じゃあ今度の日の曜日に一緒に出かけようよ!」
「ごめんなさい、マルセル様。その日も用事があって…」
「ええー! 日の曜日もなの?」

せっかくチェリーパイを一緒に食べようと思ってたのに!
つまんないの。
でも約束があるんじゃ、しょうがないか。

「じゃあ、その次の日の曜日は?」
「あ、はい。それなら空いてます!」

今までしゅんとしていたアンジェリークの顔がようやく笑顔になった。
あれ?
僕、またわがまま言って困らしちゃってたのかな?

「やったァ! それなら約束だよ。次の次の日の曜日は僕と一緒に出かけようね!」
「はい。楽しみにしてますね」

アンジェリークがそう言ってくれたから、僕は嬉しくなった。
約束の日には、アンジェリークが好きなお花と、ミルクをたっぷり入れた甘い紅茶を用意しようっと。
あ、でもハーブティーも好きだって言ってたよね。
どっちがいいんだろう?

「ねえアンジェ、紅茶とハーブティーどっちが好き?」

僕がそう言ったら、アンジェはにっこり笑った。

「どっちも好きですよ」
「そうじゃなくて! ええっと、じゃあ…アンジェは飲み物では何が一番好きなの?」

アンジェリークは好きなものが人より多いみたいだ。
だって真剣に考え出しちゃうんだもん。

「うーん…1番って決めづらいですね。 みんな同じくらい好きだし、それぞれ美味しいと思うし…」
「嫌いなものはないの?」
「…そうですね…基本的に嫌いなものはないです。苦手なものはありますけど」
「なに?」
「お砂糖もミルクも入ってないコーヒーはちょっと…」
「あはっ、それは僕もおんなじ!」

僕たちはくすくすと笑った。
本当にアンジェリークには好きなものが多い。
前に一度聞いたことがあるけど、好きなものばっかりだった。
僕の好きな植物や動物さんはもちろん、スポーツやお菓子や本やついにはお掃除といった仕事まで好きなんだって。

「だって好きなものが多いと毎日が楽しいじゃないですか」

アンジェリークが嬉しそうに僕のいれたハーブティーを飲んでそう言ったのを覚えてる。
僕はそんな彼女がすごいと思った。

 

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