<恋兎3>
ベッドに入ってもなかなか寝付けない雌兎は、干し藁の枕をぎゅうと抱きしめると呟きました。 枕からはお日様のいい匂いがしましたが、雌兎は顔をしかめたままです。 「私ばっかり好きだなんて、悔しいわ」 もちろん考えていたのは大好きな雄兎のことでした。 「・・・彼もこんな風に私のことを考えてくれることがあるのかしら…?」 そのまま顔を枕に埋めて、ため息が外に漏れないようにして息を吐きます。 「…ちゃんと私のこと好きなのかしら?」 そう呟いてから、雌兎の耳がぴょこんと動きました。 「そういえば・・・いったい彼は私のどこが好きなのかしら?」 雌兎にはどんどん不思議に思えてきました。 こうなると気になって仕方がありません。 「顔…だけは絶対違うわよね」 ぽむ、と頬に手を当てると雌兎は神妙な顔をしてうなずきました。 「じゃあ、性格? でも私はワガママよね」 雌兎は自他ともに認める甘えん坊でした。だから雄兎がかまってくれない時はふくれもしましたし、淋しい時は我慢できずに淋しいと言ってしまうのです。 「わかんなくなってきちゃったわ」 雌兎は枕にあごを乗せて、そのまま、ずぶずぶと沈んでいきます。 「彼、もしかして趣味が悪いんじゃないかしら…?」 小さなほっぺを膨らまして、雌兎は小さく唸りました。 その翌日。 「ねぇ…私のどこが好き?」 勇気をふりしぼって、雌兎は大好きな雄兎に聞いてみました。 「どこって…全部だよ。 『ここだ』なんて限定できそうにないよ」 この返事の直後に、雌兎は「…彼の趣味が変で助かった…のかしら?」と小さく呟き、雄兎は雄兎で「君だから好きなんだよ」と口の中で呟くのでした。 もちろん、お互いの呟き声はとてもとても小さくて、相手に伝わることはありませんでした。 ・END・ |
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