SCIENCE   Vol.3

 

 3人は公園をあとにし、Sデパートへと向かった。待ち合わせの場所に行けば、何か手がかりがつかめるかもしれない…そう考えたからだ。
 歩いてみて分かったが、この公園はさほど商店街から離れてはいなかった。
 先刻の爆発で歪んでしまった灰色の壁が見え始めた頃、突然、背後から男の声がした。
「いたぞっ! JNだ! Sデパートに向かっているっ!!」
 40代後半ぐらいの中年の男が3人、突進してきた。
 手のひらには光線銃。 潤を狙っているのは確かである。
 晃は咄嗟に駆け出した。

 その刹那。

 ザッと晃の顔の横の空間を、光の線がすり抜けていった。彼の襟をかすめて。
 その部分が黒くなり、カサカサと空に舞う。
(おいおい…)
 蒼ざめた顔で晃は心中呟く。
(…ここまでするか?)
 たかが8つくらいの子供に。
 化け物相手じゃないんだぜ、とひとりごちて一歩前を走る少年に視線を落とした。
 栗色の髪をなびかせながら前を見据えて走っている。
 細い肩。青白い腕。こんな小さな四肢が莫大な力を内在しているなど、ここにいる関係者以外、誰も知りはしないだろう。
「あっ!」
 前方から2人、同じなりの男が現れた。
「さあ観念して戻るんだ。出切るだけ傷つけたくないんだよ、お前を。わかるだろ?」
 唇の両端を吊り上げて、前の男が笑った。
「傷つくのはあんた達じゃないの?」
 息を切らしながらも、その少年は強気の姿勢を崩さなかった。
 ふだん人通りの少ない住宅地の路地裏は、彼ら以外誰もいない。ただ乾いたビル風が吹き抜けていく。
 沈黙。
 静寂。
 緊張。
 自分の鼓動がやけにうるさい。
 突然、ぱんっと軽い破裂音がして、男たちは過敏に反応した。うろたえたように周囲を見渡す。
 少年の攻撃は、どこから、どのようにくるのか想像がつかないのだ。
 ひゅぅ、と風を切る音が聞こえたコンマ数秒後。
 ドスンと男の足に植木鉢が落ちてきた。観葉植物と共に。
 それ自体の重さもなかなかなものだが、速度が加わっていることでその力エネルギーは倍増されている。
 成人男子の骨を砕くくらいには。
「――――っ!!」
 声にならない痛みに男はうずくまり、そのまま動けずにいた。 残りの4人は蒼ざめている。
「さぁ、どうする?」
 ふふん、と小生意気に腕を組み、潤は冷笑した。
 その態度は明らかに上に立つ者の、優越感浸っているそれだった。
「潤、よせっ!」
 いままで黙っていた晃が、潤の肩をつかんだ。
(傷つけて…笑うなんて)
「逃げるんだ。お前は攻撃するな」
 強引に体を自分に向けさせ、晃は言った。 真っ直ぐな瞳が、少年を射抜くように捉える。 
「…ったく」
 拒むことも、手を払いのけることも出来ずに、潤は、立ちすくむ残りの敵の武器を念のため破壊した。
「……いくよ」
 道をふさがれているので、潤は2人に触れるように促した。 不機嫌そうな低い声音で。
 瞬時にして3人は影も残すことなく消えた。

 かくして瞬間移動により、3人は危機から逃れたのであった。

 

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