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「ふん。なるほどねぇ」 イザベラの一通りの説明の後、クレアは面白くなさそうに頬杖をついた。 「ねぇ、もう仕返しは十分したでしょう? 関係ないリンドルムにまで魔法をかけないで。まだ気が済んでないのなら謝るわ。両親がしたことは確かに残念なことだし、貴方に失礼だったと私も思うわ。両親だって申し訳なかったって反省してるの。ねぇ、クレア・ウィッチ、お願いよ」 一心に説得した後、イザベラも同じように両肘をついてクレアと目の高さを合わせた。 「勘違いするんじゃないわよぉ、イザベラ。リンドルムの件はあたしじゃないのさ。まぁ全然 クレアは軽く嘆息した。 「どういうこと?」 イザベラはクレアの言っている意味がわからない。 「そのリンドルムとかいう坊ちゃんに原因があるってことよぉ。でもそれを説明する前に…ほんっとーにアンタの親は反省してるんだろうねぇ?」 17歳の誕生日間近になって、イザベラの両親は事の顛末を彼女に話していた。自分たちの過ちをとても悔やみ、反省し、そして決して糸紡ぎには近づかないように娘に説得しておいたのだ。 「ふん。なら許してあげるわよぉ。十分気が済んだし、あたしも大人げなかったしぃ。だから イザベラは、紅玉の瞳を輝かせると、クレアの頬に感謝のキスをした。 「あ、ごめんなさい。キスは嫌いなの?」 「そっそうじゃないけどさぁー、慣れないことはしない主義なのよぉ。妙に気恥ずかしいから 「わかったわ、クレア。ありがとう。私たちの結婚式にはぜひ貴方を呼びたいわ。いいかしら?」 ようやく落ち着いてカップのスープを飲んでいたのに、クレアは危うく噴出すところだった。 「突拍子もない娘だねぇ、アンタは。いいね、気に入った。気に入ったわよ。イザベラあんたの クレアはそう言うと、散乱した机の上から一本のペンを手にとり、やはり机の上から適当な紙を見つけてサラサラと何かを書いた。そして丁寧に四つ折にしてイザベラに渡す。 「いいかい、ここにはそのリンドルムっていう洟垂れを目覚めさせる呪文が書いてある。あんたはその洟垂れの横でこれを大声で読むのさぁ。それからはあんたの仕事だよぉ。好きなだけ激励してやんなさぁい」 「わかったわ。でもリンディは洟垂れなんかじゃないわよ」 クレアはイザベラの訂正には無視して、面白そうに付け足した。 「その紙、読むときまで広げちゃダメだからねぇ」 クレアは笑って誤魔化したが、イザベラはとても重要なことだと思って慎重に服のポケットに入れた。 「さてぇ、んじゃあんたを城まで送っていってやろうかねぇ」 イザベラは予期せぬ申し出に驚きと喜びを隠せなかった。 「関係者としては、事の顛末が気になるじゃん? やっぱ最後まで見届けたいしぃ」 すると今度こそクレアは大声で笑った。 「きゃははははははっあははははははっ」 イザベラは一瞬むっと来たが、直後にニヤリと笑ってクレアの頬にキスをする。 「なっなななんだい、なんだい?」 イザベラは余裕たっぷりに笑って真っ赤になったクレアをびしっと指差した。 「クレアの弱点発見だわ!」 この後、クレアはそのまま箒に乗ってる最中もぶつくさと不平を言い、イザベラは苦笑しながら目の前の少女を宥めるはめになるのであった。
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