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「誰?クレアなの?」 姿は見えず声だけの存在に対して、イザベラは恐怖におののくことなく詰問した。 「アンタ馬ッ鹿じゃないの?ここはクレアの森だよぉ?ここに住んでるのはクレア・ウィッチに決まってんじゃん。そういうアンタ達は誰よ?何しに来たわけぇ?」 森中に甲高い声がこだまする。ちょうど3人を取り囲むような反響の仕方だった。 「あたしはイザベラ。<レヴィスタ>の王女よ。あなたがかけた魔法をといてもらいにここまで来たわ。いつまでも隠れてないで出てきなさいよ」 イザベラは紅玉の瞳を燃え上がらせて天を仰ぎつつ声を張った。 「はん。<レヴィスタ>の小便くさいガキが生意気言ってんじゃないわよ。第一レディの家にそんなムサイ男どもを連れ込もうなんて常識がなってないんじゃなぁい?出直してらっしゃい、青二才のイザベラちゃん。きゃはははは」 頭蓋骨に反響するような笑い声だった。 「冗談じゃないわよ!クレア・ウィッチ、あなたが今までやってきたことを考えれば護衛だって必要にもなるわ。さっさとリンドルムの魔法を解いて!」 イザベラの言葉を聞いたクレアは急に声色が変わった。 「お、お嬢様…」 カインは青い顔をして、激昂するイザベラを落ち着かせようとしたが混乱して言葉が出ない様子である。カインよりやや年下のエドは情けないことに弱音を吐き出した。 「そうよ。<ノーヴァ>の第三王子が私と入れ替わりに眠りについてしまったわ。あなたの仕業なんでしょう?こんなのってないわ。私を100年眠らせただけじゃ足りないというの?どうして無関係のリンドルムまで眠らなくちゃいけないの?いい加減にして!」 イザベラは天をまっすぐに見据えて怒りを開放した。 「…そんな魔法、私はかけた覚えがないんだけどねぇ。因縁をつけられるのも不愉快な話だしぃ。いいわ、イザベラ。ちょっと私の家までおいで。特別に入れてあげる。ただしそこの情けない男たちはダメよぉ」 少女は大人びた仕草で指を己の顎に当てた。 「もちろん行くわ。……エド、カイン悪いけどここで待っててね」 まだ分別のあるカインが食い下がるがクレアによって一蹴されてしまった。 「翌朝になっても帰ってこなかったら援軍を呼んできます」 なんて調子のいいことを言う。 「それじゃ行って来るわね」 いささか毒を抜かれたイザベラは、潔くクレアと一緒に夜の闇に消えていった。 ++++++++++++++++++++ 「100年前はオシメもとれないハナ垂れだったのにねぇ」 どうやって通ってきたのかイザベラには分からなかったが、案内されたクレアの家は無節操に集められた雑貨が散乱して足の踏み場しかなかった。 「確かにこれじゃ他人は呼びたくないわね」 イザベラは容赦ない。 「うるさいわねぇ。客は黙って茶でもすすってりゃいいのよぉ」 クレアはそう言って、かなり年代物であろう銅のカップに温めたスープを入れてもてなした。 「ありがとう。…おいしいわ」 まんざらでもなさそうにクレアも同じ物を飲む。 「それで?アンタの言い分をまず聞いてあげようじゃないのさぁ」 イザベラは目覚めてからの経緯をクレアに説明した。
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