3 |
王女イザベラは、意思の強い乙女であった。 一度決めたらテコでも動かない。 彼女がまだ幼少の頃、狩りから帰った父親の獲物を抱きかかえて森へ逃げたことがあった。 「難儀なことだ・・・」 国王は深くため息をついた。 「・・・仕方あるまい。もはやお前に何を言ってもきかぬだろう。お前の好きなようにするがいい。だが、一人では行かせぬぞ。必ず供を連れて行け。それが条件だ」 ようやく紅蓮の瞳を幾分和らげて、イザベラは微笑んだ。 「・・・ふん」 国王は、決まりが悪そうに横を向く。 「気をつけるのですよ」 その横で、王妃は、心配そうに眉を寄せた。 「すぐに帰ってくるわ、お母さま」 そんな母の胸中を知ってるイザベラは、そっと母の頬にキスをする。 「では、すぐに出発しますわね」 彼女はその言葉どおり、半時もしないうちに、供を2人連れて王宮から出発したのだった。 ++++++++++++++++++++++ 通称<クレアの森>に入った一行は、森の奥深くを目指して歩いていた。 「おかしいわね」 森に入ってから3時間ほど経った頃、大きな岩に腰掛けて休んでいたイザベラは呟いた。 「道に迷ったのかしら…?」 すでに日は傾きかけている。 「エド、カイン、今日はもう進むのはやめましょう。野宿する準備をするわよ」 衛兵の一人でイザベラよりも5つも年上であるカインが心配そうに訊いてきた。 「森から抜け出せないのだから仕方がないわ。大丈夫、蛇や蜘蛛くらいじゃわめかないわよ。さ、あなた達、火を起こせるように枯れた枝を集めてきてちょうだい」 王女は手馴れたように指示を出し、衛兵二人は彼女に言われるままに周辺から薪を集めはじめた。すると… 「ちょっとぉ、アンタ達ぃ、人の庭で何やってんのよぉ」 妙に間延びした幼い少女の声がした。 |
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||