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母の疑問符に、イザベラは気づいた。 「なぁに、お母様どうしたの?」 王妃は困ったように微笑して、おっとりと口を開く。 「この方のお召し物に、西の大国<ノーヴァ>王国の紋章がありますわ」 つまりは王族出身者ということである。 「なに!?」 国王は血の気が引く思いで聞き返し、娘は興奮気味に確認した。 「とにかく、その青年をベッドに寝かせよ。そして一切口外せぬように城の者に通達を出せ」 去り際の従者に慌てて命令すると、イザベラは大きく息を吐いた。 「…やっぱり眠っちゃったのは私のせいなのかしら?」 あの時の接吻で、自分に残っていた毒が彼に回ってしまったのではないか。 +++++++++++++++++++ <ノーヴァ>はイザベラの住む<レヴィスタ>国の西方に位置する大国である。 「まったく…面倒なことになったものだ」 娘を呪から解放してくれたことには感謝するが、新たに面倒を持ち込まれた国王は、ズキズキと痛む頭を押さえた。 「お父様!」 かつかつと小気味よい靴音を立てて、イザベラが真っ直ぐ玉座に向かってきた。 「どうした。お前はもう少し休んでいたほうが良いのではないか?」 <ノーヴァ>に遣らせた使いが戻ってきたらしい。 「御名は リンドルム・エト・フォルス・ノーヴァ 。<ノーヴァ>の第3王子です。3日程前から イザベラの良く通る声が、王室に響き渡る。 「医者に診せたところ検査で毒物は検出されず。よって魔法の効力だと判断するそうです」 国王は、もう下がるようにという仕草をしたが、イザベラは聞き入れなかった。 「ちっとも良くないわ!」 娘の突然の決意に、国王は眩暈がした。 「その魔女とは…つまりお前に魔法をかけた クレア・ウィッチ のことか…?」 王妃が至極まっとうな意見を述べる。 「そんなの構わないわ。それに誰かは行かなければならないはずよ。リンドルムの呪は解かなければならないもの。だったら私が行く。今度は私が呪をとく」 げんなりと国王は王妃をたしなめた。 |
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