−3−


また、あの人がいらっしゃったわ。
キラキラ光を反射するプラチナブロンドの髪。
何て綺麗なのでしょう。
ああ、でも今日は見ているだけでは駄目よ。

今日は神様が下さった唯一のチャンスですもの。
今日だけは、私はあの人と同じ人間ですもの。

気持ちを伝えなくっちゃ。後悔せずにすむように。

「あの…」
「はい?」

振り向いたあなたの驚いた顔といったら!

「毎日、来て下さってありがとう」
「・・・これは夢、かな・・・?」

信じられないのね。無理もないわ。

「あなたが来て下さって、私とっても嬉しかったの。その、私、あなたのことが・・・」
「ちょっ、ちょっと待ってくれないか」

まぁ、せっかく人が勇気をふりしぼって告白してるのに。
遮るだなんて、ひどいわ。

「君は、あの絵の・・・?」
「ええ。そうよ。驚かせてしまってごめんなさい。どうしてもあなたに気持ちを伝えたくて・・・」

あら? あんまり嬉しそうじゃないわ。
どうして? 
私のこと好きじゃないの?

「これは・・・興醒めだな」
「え?」
「僕は君が喋らないから好きだったのに。いやはや、神様も底意地の悪いことをして下さる」

何を言っているの?

「私が好きではなかったの?」
「ああ、好きだったよ」

ならどうして?

「分からない? 君は僕の中で完璧だった。愚かなことも言わず、僕に何もねだらず、ただ慎ましく微笑んでいた。僕の想像上の恋のお相手には十分だったよ」
「・・・想像上ですって?」
「だが、それも君の登場で終わりだ」

ああ、どうしてこの人はこんなにも冷たい目で私を見つめるの?
あの柔らかな春の日差しのような微笑はどこ?
情熱的に私を捕らえた愛情溢れる眼差しはどこ?

「僕は君が好きだった。でも君と恋をしたかったわけじゃない」

あんなに私を見つめていたのに!
私じゃなくても良かっただなんて!
恋に恋していただなんて!

「・・・ごきげんよう。二度と私の前に現れないで」
「こいつはどうも」

日が、暮れるわ。
なんて一日。
なんて失恋。

<<後悔したかい?>>

神様。いいえ、後悔はしてません。
チャンスをお与え下さったこと、感謝しておりますわ。
そもそも私はただの一枚の絵に過ぎませんもの。
過ぎた願いだったのですわ。

もっとも、私が本当に生身の人間でしたら彼の頬に一発くらわせてましたけれど。

<<おいで>>

もう、行ってもよろしいのですか?
私の魂を連れて行ってくださいますか?

<<新たな生命に宿らせてあげよう。何を望む?>>

それなら。
どうぞ次の生もまた、女にしてくださいませ。

・END・

>BACK


【作品一覧へ】


広告 [PR] 再就職支援 スキルアップ アルバイト 無料レンタルサーバー