−5− 「ここの従業員はどいつだ!!」 男が手の中の銃を、これ見よがしに見せて怒鳴り散らした。 「おう、て、てめぇ俺のそのバッグに有り金 全部つめろ。下手な真似してみろ。この野郎をぶ、ぶっ殺すからなっ!!」 弾丸を恐れて伏せている客の中から一人の若い男が飛び出した。 「あんまりざけたこと言ってんじゃねぇぞ――――」 ダークスーツからゆっくりと、その洗練されたリボルバーを抜き出す。 「な、なんだてめぇは!?」 低い声音で言い切ると、隼人は撃鉄をカチリと起こした。すぐにでも、トリガーを引きさえすれば発砲できる状態だ。 「じゅ、銃を捨てろっ! こいつをぶっ殺すぞ!!」 焦った犯人が、榊の首に腕を巻きつかせて天井に発砲した。 「殺せ」 男に捕らえられた本人が、良く通る声で言った。 「正義の味方に助けられるなど、私の名に傷がつく。そのような辱めを受けるのなら、自らを持って散る」 どこか芝居がかった台詞なのになぜか真実味を帯びて、そこにいた全員に伝わった。 「破滅・・・いや、悪の美学か。・・・・・・おもしろい」 隼人が低く笑った。その表情に、榊が人知れず驚く。そしてある確信が、榊の中に生まれていた。 さて、その本人だが、その頃になると飲んでいた酒がようやく回ってきて、隼人の思考を正常なものからどんどん離していった。 かつん、と銃を構えたまま隼人が一歩踏み出した。 「て、てめぇ・・・人質がどうなってのいいのか!」 振り絞った声で、男は情けなく吠えた。 「俺の知ったことか」 男の言葉を受けて、隼人が冷たく突き放した。 「そ、それでも正義の味方か!?」 皮肉なのか、混乱の産物か、どちらともつかない言葉を、男は負け犬のように顔面を引きつらせて続けた。 |
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