まだ隼人は状況が飲み込めていない。榊が軽い身のこなしで戻ってくると隼人がちょうど着替え終わった時だった。 「くっ…七五三みたいだな…」 必死に笑いを堪える榊を見て、さすがに隼人はむっとした。 「おいおい。悪かったって」 不機嫌を顔面いっぱいに表して、隼人はスーツ姿のまま買ってきたものを冷蔵庫に移し始めた。 「あ、俺がやっといてやるよ。だから隼人、お前、髪整えて来い」 近づいてきた高身長に挑むように口を開くと、男はぽんと隼人の頭に手を置いた。 「大人の世界にご招待だ。夜の楽しみを教えてやるぜ」 甘く微笑すると、男は茫然としている隼人から買い物袋をとって、その位置を占領した。 「似合うじゃないか」 前髪をほとんど後ろに流し、女心をくすぐる程度に前に垂らした。 「これも忘れずにもってけよ。もう一つのプレゼントだ」 ぽん、と例の箱を投げてよこした。 「何、これ?」 まさかビックリ箱じゃねぇだろうな―――――――。 「おい、危険物だぜ」 ますます怖くなって、やめようかな、なんて思いながら隼人は慎重に箱を開けた。 「っ!!」 マジかよ――――――――――――――――っ!? 「S&W(スミス アンド ウェッソン)M586。カッコイイだろ」 榊の大きな掌におさまっているのは拳銃である。 「これねぇ、とある筋を拝み倒して譲ってもらったんだ。リボルバーの王者って呼ばれてる代物なんだぜ」 そこまで言って、榊はゆっくりと銃をかまえた。 「コイツを見てビビらない奴はいない」 すっと銃口を窓の外のネオンに向けて、榊は引金に指をかけた。 「カッコいいだろ」 榊はいつまでも黙っている隼人に振り返って訊いた。 「銃が? それとも榊が?」 とげとげしく言う隼人に、いたずらっぽく榊は破顔した。 |
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