白夜 |
高身長の、すべて黒づくめの男がひっそりと立っていた。 闇に溶け込んだ漆黒の眸。 整った、美しい顔立ち。冷たい凍てつくような表情をしている。 ふと、男が冷笑を口許に宿して、組んでいた腕をほどき、皮手袋に包まれた指を広げた。 その掌の中に、光の玉が出現する。 禍々しく輝くその光に、男はもう一度笑うと、玉は掌から滑り落ちて、ぐにゃりと変形した。 みるみる魔性の怪物へと変わって、その男に跪く。 「行け。美味そうな獲物を狩ってくるのだ」 黒づくめの男が低く、よく通る声で言うと、目の前の怪物はうなずき、すっと姿を消した。 「はい、カット」 OKでーす、と元気な声がスタジオの奥から聴こえてきた。 「いやー名演技、名演技。いつもかっこいいねー榊君は。雰囲気出てたよ」 これまた真っ黒なマントを肩から外しながら、榊克巳は人なつこい笑みを監督に返した。 「あれ?榊君帰っちゃうの?飲んで…っと、デートか?」 お疲れの声と一緒に帰り支度をしている榊を見て、小道具係が声をかけた。 「いや、今日は可愛い甥と過ごすの。ごめんね、てっちゃん」 片手で小道具係に詫びると、そのまま榊はそっと耳打ちした。 「言っとくけど、榊君だけだからね。ホントに頼むよ。俺のクビかかってんだから」 大げさに首を伸ばして舌を出し、自分の手で首を切るマネをする。 「ありがと、てっちゃん。また何かあったらそん時もよろしく」 はあ、とため息をつくてっちゃんに榊は敬礼を投げて、スタジオを後にした。 |
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