顔をなくした日

  朝。今までだったら、爽快に目が覚めるのに、最近はそうじゃない。
原因は分かってる。夜眠れないから…。
寝る時間が遅くなっちゃ、朝起きるのがつらいのは当ー然だよね。
心当たりはないわけじゃないけど、それにしたって肌荒れなんてしたらオリヴィエ様の名が泣くよ!
ってことで、私はいつも通りにシャワーを浴びる。
そして鏡の自分に向かってあいさつを…

「…って えええええええええっっ!?!?」

私は慌てて着替えると、真っ先にルヴァの執務室に向かった。

「あーオリヴィエ。おはようございます。どうかしたんですか?こんなに早くに」
「ルッ、ルヴァ!! 私って分かるの? なんかいつもと違わない?」
「はい?」
「だからっ! 顔だよ。私の顔!! 知らない人になっちゃってない? あんたの知ってるオリヴィエと違うでしょ!?」 

ルヴァは何のことだか分からないって顔をして首をひねってる。

「えーと。…いつものあなたにしか見えませんけど…一体どういうことなんですか?」
「……こっちが聞きたいわよ…」

鏡を見て驚いた。
――― この人…誰…?
首の上にあるはずの私の顔が、別人になっていた。そう。「似てる」んじゃなくて「まるっきり別人」。
寝起きで顔がむくんでるのかと(不本意ながら)思ったけど、でも、面差しから全然違う。
――― 私の顔は??
長年親しんだ、人からキレイって言われてるオリヴィエの顔はどこにいっちゃったんだろう。
ルヴァのとこに行けば どーにかなると思ったのに。

「ね。正直に言ってよ、ルヴァ。本ッ当ーにオリヴィエの顔に見える?」
「ええ。私から言わせればいつもと何も変わりませんよ」

こんなことってあるのかな?
私しか私に見えない なんて。 

「あー…オリヴィエ。もしかして疲れてるんじゃないんですか?」
「ん。そうかも。……でもやっぱり納得いかないのよねぇ。ま、他の人には私だって分かるみたいだから実害ないけど。
今日は下手に動かないで休むことにするよ。朝早くから邪魔したね」

ば〜い。と右手を上げて私は執務室に戻ることにした。
一応、休みって言っとかないと女王候補達が捜すかもしれない。
それはあまり嬉しくない事態なのよねぇ…。はぁ。

「よお、極楽鳥。ため息なんて珍しいな」
「はぁーあ。よりにもよって、なぁんであんたなんかに出会うかね」
「なんか、とは失礼な奴だな。どうした。腹の具合でも悪いのか?」

廊下の向こう側からやってきたのは赤い髪をした炎の守護聖だった。

「オスカー。あんたと一緒にしないでよ。…ねえ、ところで、今日の私 いつもとちょーっと違わない?」

いつも私に絡んでくるコイツならもしや…と期待してたんだけど。

「なんだ? 化粧品でも変えたのか?」
「……あんたに訊いた私が馬鹿だったわよ…」

視界の端でオスカーが傷ついた顔をしたけど、そのまま私は無視した。
ごめんねオスカー。今の私は余裕と言うものが欠如してるんだ。
そんな私に出会ったあんたの運が悪かったってことで勘弁してよ。

とにかく、女王候補に出会う前に部屋に帰って休もう。
私は隠れるように帰り路を急いだ。

TOP
NEXT

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送