空・風・勇気

やぁ、俺ランディ!勇気のサクリアを司る風の守護聖さ。
全員で9人いる守護聖の中では年少組みに入るんだろうけど、女王試験はもう2回目なんだ。
前回の試験に比べて協力者が増えたせいか毎日がすっごく楽しいよ。

やっぱり多くの人と出会うって大事だよな!

今回の試験を通して俺は沢山の人に会って、人間の幅を広げようって思ってるんだ。
そうやって守護聖としても一人の男としても成長したいっていつも思ってる。
だってそうすれば昔憧れた正義のヒーローみたいに、悩んでる人にそっと勇気を運ぶことが出来るだろ?

俺の力で勇気をみんなに与えたい。

いつかオスカー様に対等に扱ってもらえるような守護聖になるんだ。
そのためには勉強もしなくちゃな。
でも活字って読んでるといつの間にか眠っちゃうんだよな…ハハッ…やる気はあるんだけど。
とにかく俺は借りてた本を返しに図書館に向かったんだ。

+++++++++

図書館は学芸館の裏にある。
もともと、ゆっくり本が読めるようにっていう配慮から庭園からも少し離れててすごく静かだ。
今日は晴れてて風も気持ちいい。
俺はなんだか歩いてるのがもったいなくて、いつの間にか軽いジョギング状態だった。
やっぱり青空の下で体を動かすのって気持ちいいよな。

ようやく図書館に走りついて、壁に右手を着いて息を整えた。
はあ、はあ、はあ。
手のひらからは、壁のひんやりした感触が伝わってくる。
ようやく息を整えた俺は、今度はぐいっと万歳の格好で伸びをした。

「んっ…あれ?…き、君はアンジェリークじゃないか!?」

見上げた視線の先には、大木の枝にしっかりとしがみついた女王候補がいた。
俺と眼が会った瞬間「しまった」って顔をしてる。

彼女の名前は、確かアンジェリーク。
栗色の髪とブルーグリーンの強気な目をした印象的な子だったから覚えてる。
でも、その女王候補がなんだって図書館脇の大木で木登りなんかしてるんだろう?

「ランディ様、しーっ!」

俺が素っ頓狂な声を挙げたのに慌てて、アンジェリークはひそめた声と一緒にジェスチャーで俺を注意する。

「ご、ごめん」

でも何やってるのかな?
どう見ても、図書館に不法侵入してるようにしか見えないんだけど…ハハ、まさかな。
だってここは女王候補が入っちゃいけないって言われてるはずだし。
…ってことは、もしかして、降りられなくなっちゃったのか!!

「待ってて、アンジェリーク。今、俺が助けに行くから!」
「は?」
「ちゃんと枝につかまってるんだよ。俺が行くまで頑張って!!」
「え?え?」

俺は言うが早いか大木にするすると登った。
自慢じゃないけど、俺、木登りは得意なんだよな。
今だってたまにマルセルに誘われて見晴らしの木にも登るんだぜ。

…とか言ってるうちにアンジェリークの隣にまで来た。
左手を幹につかませて、右手を彼女に差し出す。

「つかまって」
「は、はぁ…」

アンジェリークは大きな瞳をきょとんとしたまま俺の手につかまった。
俺は勢い良く自分のもとに引き寄せる。ぽすん、と彼女の体が俺の胸にぶつかった。

「もう大丈夫だよ」
「何がですか?」
「え?だから君は足元が怖くなって枝の上で立ち往生してたんだろ?」

そこまで言うと、アンジェリークはぷっと吹き出してそれから大笑いした。
とっても可笑しそうに、栗色の髪を揺らしながら笑いつづける。

「アンジェリーク?どうしたんだい?俺、何かまた変なこと言ったかな…?」

ときどきオリヴィエ様にからかわれるから、俺の台詞ってたまにおかしいのかもしれない。
俺はいつも思ったことを言ってるつもりなんだけどなぁ。
それにしたって人の言葉を笑うっていうのは失礼なんじゃないか!?
俺はアンジェリークがどうして笑ってるのか分からなくて困ってしまった。

「あー、おかしかった。ランディ様ごめんなさい。せっかく助けて頂いたのに笑ったりして」
「いや…でも一体何が可笑しかったのか教えてくれないかな?」

そう言ったら、アンジェリークはまた可笑しそうに笑った。でもさっきより優しい笑顔だ。

「誤解なんですよ」
「ゴカイ?」
「そうです。私、高いところが怖くなったんじゃなくて、図書館の中にいたルヴァ様から身を隠してたんです」
「……えっ?」

俺が驚いた顔をしたら、アンジェリークは悪びれずに説明し始めた。

【TOP】【NEXT】


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送