流砂の夢

 

少しだけ、話を聞いてもらってもいいでしょうかねー。
あー面白くはないかもしれませんが、そんなに長くはないので。ね?
・・・あー、そう言ってもらえて安心しました。ありがとう。

夢を見ました。砂漠の夢です。
そこはとても私の生まれ育った故郷に似ていて、とても似ていて…私は懐かしさを感じながら、妙な切なさをも一緒に感じていました。

私の故郷は砂ばかりで、あまり人が住むには適しているとは言えないところでした。

気まぐれに強い風が吹いて、それが砂嵐となって足跡を消し去るのです。
人はその間じっと家にこもり、嵐が去るのを待ちます。
そして私は嵐の去った晩は必ず外に出て夜空を仰ぎました。

ふふ。砂嵐のあとは夜空の星がくっきりと見えるんですよー。
ただ静かに光る星たちを見て、私は胸がどきどきしたのを今でもよく覚えています。
前に一度、あなたにお話したかもしれませんね。

あー。だからね、アンジェリーク。
私はその故郷に帰ってきたのかと思ったんです。

ところで、あなたは「流砂」ってご存知ですか?
あ、知りませんか?
「流砂」というのは、水を含んで流動しやすい砂のことなんですが、砂漠の砂も水分は含んでませんがとても流れやすいんです。
そうですねー、砂時計の砂を思い出してもらえれば分かりますかね?

その砂は私の故郷では風に吹かれるたびに、サラサラと水のように流れて、水流のような痕を作り、次々と形を変化させていきます。変わらないものなんて何一つなかったのです。
でも、夢の中はまったく逆でした。
何も動かないんですよー。砂一粒も。

それで私は、あー夢の中にいるんだなー、って妙に納得しながら砂丘を歩くんです。
砂に足跡がつきます。
でもその足跡は決して消えません。風も吹かないから、砂の崩れる音もしません。

私が切なさを感じたのは、この音のない世界のせいだったんでしょうね。
空を仰いでも、真っ青な空が広がるばかりで星も見当たりません。太陽がカンカンに照ってるんですが時間も分からないので自分がどこに進んでいるのか分からないんですね。

それでも私は歩きつづけました。

ここでないどこかへ辿り着けるのではないかと思ったんです。

そのまま歩きつづけていたら、どうなったと思います?
・・・ええ、そうです。人がいました。誰だか分かりますかー?

あなただったんですよ、アンジェリーク。

あなたはにっこりと可愛らしく微笑んで、「こっちです」って驚いている私の手を取りました。
その途端に、ゴオオオという音と共に突風が吹いて私は思わず目をつぶりました。
砂のつぶてが全身に飛んできて、痛くてしょうがないし息もつけないのですが、あなたの手だけは離すまいと必死で掴んでました。

そして風がやんで、目を開けると、不思議なことにそこはオアシスになってました。
あ、オアシスというのはですねー、砂漠地帯に点在する池のようなものでして、あーなんと言うか水が貴重な砂漠ではとてもありがたい場所なんです。

水があれば植物も育ち、生き物も生息します。
一種の楽園なんですねー。

そこであなたは私の手を握ったまま、また笑って言うんです。
「もう、大丈夫ですね!」って。
私は何だかとっても嬉しくなって「そうですねー」と一緒に笑いました。

だからね、アンジェリーク。
あなたは私の夢の中でさえ救ってくれたから、どうかお礼を言わせてください。

あなたのその無邪気な微笑みに、私はいつも救われているんです。
そんな明るいあなただからこそ、一緒にいたいと思ってしまうんでしょうねー。

おやー?そんなに顔を赤くして、大丈夫ですかー?
少し話しすぎてしまいましたかねー。すみません、疲れましたか?
今日はもう休んだ方が良さそうですね。

また明日、元気な笑顔で会ってくださいね。
あなたの笑顔が私は大好きなんですよー。
それじゃあ、また明日。

 

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