それは独占欲に酷似した感情だった。 だが檻に入れて誰の目にも触れさせぬように鍵をかけるわけではない。 逆に彼女を自由にさせておいて、なお自分だけを見るように、自分だけを想うように、他の誰も入り込む余地がないくらい彼女を征服したいだけだ。 彼女に愛されたいだけだ。 「・・・何を考えている」 先ほどから一向に進まない書類を睨みつけながら、ジュリアスは自問する。 よく分かっている。 ジュリアスは立ち上がると、窓辺に寄った。 「だが、この不可解な気持ちを、どうすればいい・・・」 窓ガラスに映る整った眉目は、深々と苦悩を刻む。 外は夜。 ジュリアスは思い立ったように、執務室を出た。 「アンジェリーク、もう休んでしまったか?」 控えめにドア越しから声を掛けると、聞きなれた声で軽やかな返事が返ってきた。 「今宵の月は美しい。私と庭園でも散策してみないか」 理由などどうでも良かった。 ■■■ 月光が彼女の栗色の髪を優しく照らし出す。 「お前の噂を良く聞く。頑張っているようだな」 こんな夜にさえ、気の聞いた台詞一つ言えない自分が恨めしかった。 「ありがとうございます。みなさんのおかげです」 いつだって感謝の気持ちを忘れない少女だった。 「何か困っていることはないか。嫌な思いもしてはいないか。何かあればすぐに私の所に来るがいい。試験以外のことでも力になろう」 ジュリアスが、まっすぐにアンジェリークの瞳を見てそう言った。 「ありがとうございます、ジュリアス様。とても嬉しいです」 名前を呼ばれた途端、ジュリアスの身体に微細な電流が走る。 「・・・ジュリアス様?」 急に黙り込んだジュリアスを不思議に思って、アンジェリークは一歩彼に近づいた。 「っ!?」 ジュリアスは思わずその腕を引き寄せてしまった。 「あ、あの・・・」 アンジェリークの瞬きをする音まで聞こえてくる距離である。 |
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